美しい日本の私~現代文・英語・社会をはじめとする勉強のススメ
では、本書の一部だけピックアップしてみます。
逢仏殺仏 逢祖殺祖
これはよく知られた禅語ですが、他力本願と自力本願とに佛教の宗派を分けると、もちろん自力の禅宗にはこのように激しくきびしい言葉もあるわけです。
他力本願の真宗の親鸞の「善人なほもて往生す。いわんや悪人をや。」も一休の「仏界」「魔界」とかよう心もありますが、行きちがう心もあります。
その親鸞も「弟子一人持たず候」と言っています。
「祖に逢へば祖を殺し」、「弟子一人持たず」は、また芸術の厳烈な運命でありましょう。
【問題】
この文章を読めば、「逢仏殺仏 逢祖殺祖」に返り点が打てるはずですから、まず返り点打ってみて下さい。
そして、この言葉の意味を推慮し簡潔にまとめてみて下さい。
この禅語は「臨済録」に記された言葉で、「仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し,父母に逢うては父母を殺し,親眷に逢うては親眷を殺して,始めて解脱を得ん。」
中国の「無門関」においては、「仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、生死岸頭において大自在を得、六道四生の中に向って遊戲三昧ならん。」という言葉で語られるものです。
この講演は、当然ながら同時通訳で聴衆に伝えられました。
日本文学研究者サイデンステッカーという方の同時通訳において、「逢仏殺仏 逢祖殺祖」は次のように英訳されました。
“If you meet a Buddha, kill him. If you meet a patriarch of the law, kill him.”
さて、この英語を世界に発信したとして、どれほどの人々にその真意が伝わるのでしょうか?
日本の「禅」なる宗派は、さながら暗黒マフィアのような組織だと思われてしまうかもしれませんね。
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